社長と幹部の時間を「月50時間」生み出す方法:中小企業が真っ先に導入すべき「時間創造部」の業務設計
「AIを導入したいが、検討する時間すらない」——中小企業の社長から、この言葉を何度聞いたかわかりません。DXだ、AIだ、と世の中は騒がしいのに、肝心の社長と幹部が目の前の業務に沈んでいて、新しいことを考える時間がゼロ。これが日本の中小企業の、偽らざる現在地だと思います。
この記事では、拙著『スーパータイムマネジメント』のエッセンスをもとに、社長と幹部の時間を月50時間生み出す「時間創造部」の業務設計をお話しします。AIより先に、まずこれをやってください。AIを回すための「土台の時間」がない会社に、どんなツールを入れても動かないからです。
時間は「管理するもの」ではなく「創造するもの」
世の中のタイムマネジメント論の多くは、「今ある時間をどう効率よく使うか」を教えます。スケジュール帳の書き方、隙間時間の活用、マルチタスクのコツ。しかし、私の考えは根本から違います。
時間は管理するものではなく、創造するものです。
スタントの現場で、私は「1秒」の重みを叩き込まれました。爆破のタイミング、車の衝突、落下の受け身——すべてはコンマ数秒の設計で、生死が分かれます。だからスタントチームは本番前に、動きの一つひとつを「これは本当に必要か」と削ぎ落とし、必要な動きだけを残します。削るから、時間が生まれる。生まれた時間が、安全と品質をつくる。この原理は、経営でもまったく同じです。
「時間がない」と言う社長の1週間を見える化させていただくと、ほぼ例外なく、時間は「ない」のではなく「奪われて」います。誰に?——なくても困らない会議、読まれない報告書、社長でなくてもできる承認、その場にいるだけの打ち合わせに、です。
時間創造の考え方を含む経営の全体設計は、無料PDF「AI×感動創造部 売上倍増の設計図」でも解説しています。
月50時間はどこに眠っているのか——幹部の時間の解剖図
「月50時間」と聞くと大げさに感じるかもしれません。しかし、分解すると現実的な数字であることがわかります。私が8社を同時経営していたとき、各社の幹部の時間を実際に解剖して出てきた「埋蔵時間」は、おおよそ次の通りでした。
- 会議の削減で月15時間:定例という理由だけで続いている会議を廃止・短縮。「その会議がなければ意思決定できないか?」と問うと、半分は消えます。
- 報告・資料づくりの削減で月12時間:「上に説明するための資料」は、ほとんどが読まれていません。口頭1分+メモ3行で足りるものを、パワーポイント10枚にしている。
- 承認・確認の委譲で月8時間:やり直しがきく(可逆な)判断は、部下の即決に委ねる。社長や幹部が判断すべきは、戻せない判断だけです。
- 定型業務のAI化で月15時間:議事録、日報の集約、メールの一次返信、資料のたたき台。ここで初めてAIの出番です。
合計、月50時間。注目していただきたいのは、50時間のうち35時間は、AIを使わずに生まれるという事実です。削除と簡素化が7割、AIは残りの3割。世の中の「AIで業務効率化」の議論は、この順序が逆さまなのです。不要な業務を削らないままAIを入れると、不要な業務が高速化されるだけ——私はこれを「速く空回りする」と呼んでいます。
「時間創造部」の業務設計——4週間で立ち上げる
この考え方を、一過性のカイゼン運動で終わらせず、組織の仕組みとして定着させたものが時間創造部です。特別な部署を新設する必要はありません。既存の幹部2〜3名に「時間を創造する」というミッションと権限を与え、次の4週間サイクルで立ち上げます。
社長と幹部全員の1週間を、30分単位で記録する。感想や反省は不要、事実だけ。ここで「時間が奪われている場所」が全員の目に見えるようになります。
すべての会議・報告・承認に「誰が、なぜ必要と言ったのか」を問い、答えられないものを廃止する。少し不安が残るくらい削るのが正解です。後で必要になれば戻せばいい——戻すのは1割以下で済みます。
残った業務を短くする(60分会議→25分、資料10枚→メモ3行)。同時に「可逆な判断は現場で即決」の権限ルールを明文化する。幹部の残業は、実はこの週にいちばん減ります。
残った定型業務をAIに移す。そして生まれた時間の使い途を先に決める——お客様を感動させる企画、幹部の学び、新規事業の検討。使い途を決めないと、空いた時間は元の業務に埋め戻されます。
時間創造部の立ち上げ、タイムマネジメントセミナーのご相談はお気軽にどうぞ。
よくある失敗——時間創造部が3か月で消滅する3つの理由
正直にお伝えすると、時間創造の取り組みは、放っておくと3か月で元に戻ります。私が見てきた失敗には、はっきりした共通パターンが3つあります。先に知っておけば、すべて回避できます。
- 失敗①:社長が例外になる。「みんなは会議を減らせ。ただし私が呼ぶ会議は別だ」——これで時間創造部は死にます。時間の削除は、社長の予定表から始めてください。トップが自分の会議を3つ消せば、幹部は安心して10個消せます。
- 失敗②:削った時間の「使い途」を決めていない。自然界に真空が存在しないのと同じで、空いた時間は必ず何かに埋まります。使い途を先に予定表へ書き込む——「毎週火曜9時からの90分は、お客様の喜びを考える時間」と固定してしまうことです。予定になっていない決意は、実行されません。
- 失敗③:成果を「残業時間の減少」で測る。残業削減を目標にすると、仕事を家に持ち帰るだけの偽装改善が起きます。測るべきは「社長と幹部が、未来のことを考えた時間」と「お客様の予想を超えた回数」。この2つが増えていれば、時間創造部は機能しています。
3つに共通するのは、時間創造が「制度」ではなく「トップの姿勢」で決まるという事実です。仕組みは私どもがいくらでも設計できます。しかし最初の会議を消す勇気だけは、社長にしか出せません。
まとめ——生まれた時間を、何に使うかがすべて
最後に、いちばん大事なことをお伝えします。時間創造部の目的は、残業を減らすことでも、業務を効率化することでもありません。社長と幹部が「お客様の喜びを考える時間」を取り戻すことです。
月50時間あれば、お客様一人ひとりの顔を思い浮かべて「予想を超える一手」を設計できます。AIに営業の設計図を学習させる仕込みができます。つまり時間創造は、感動創造の土台なのです。時間を創り、感動を設計し、AIで仕組みにする——この順番が揃ったとき、中小企業の売上は静かに、しかし確実に倍増へ向かいます。
まずは今週、あなたの会社の会議を一つ、勇気を持って消してみてください。それが時間創造部の、最初の一歩です。
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